姿勢が悪いと腰痛になるのか!?

 皆様こんにちは、あるいはこんばんは。理学療法士の青堀です。臨床にて腰の痛みがある方より、「姿勢が悪いから腰が痛くなるんだよね〜」ということが聞かれます。姿勢が悪いとはどのようなもので、そのために腰痛が発症するのでしょうか?今回は、セラピストが姿勢を評価するときの基準や悪い姿勢とはどのようなものか、悪い姿勢と腰痛は関連性があるのかを考えてみたいと思います。

 正常な立位姿勢の基準は、矢状面上において、耳垂(乳様突起)〜肩峰大転子〜膝関節中央のやや前方(膝蓋骨後面)〜外果前方(外果の5cm前方)が直線上に一致することで判断します(図1参照)。1)脊柱の形状は頚椎部で前彎、胸椎部で後彎、腰椎部で前彎を呈しており、骨盤は軽度前傾(上前腸骨棘〜上後腸骨棘の高さ:2〜3横指)2)となっています。これに対して、悪い姿勢(以下不良姿勢)とは上記の状態が崩れたものであり、代表的なものとして「後彎ー前彎姿勢(kyphosis-lordosis posture)」、「平背姿制(flat-back posture)」、「後彎ー平坦姿勢(sway-back posture)」などに分類されます(図2参照)。3)青年期の男女766名を対象とした調査にて、上記の姿勢に分類して、アンケートにより背部痛との関連性を調査した結果、「背部痛の経験」、「3ヶ月以上続く背部痛」などの項目にて正常姿勢郡と比べ、不良姿勢郡で有意に高い値を示しており4)、不良姿勢と腰痛に関連性があることが示されています。

 一方、姿勢により腰痛が発症するという総意はないとする論文5)もあります。現在、腰痛に関しては、病理的因子だけで判断するのではなく、心理社会的因子など多因子を含むものとして考えられており、不良姿勢も腰痛になる一つの要因として考えることが必要とされています。また、不良姿勢とならないように心がけるのではなく、姿勢を変える能力や機能を有することが重要とされており、同じ姿勢を取り続けることが腰痛を発症する要因となることが考えられています。6)

  よって、姿勢が悪い事自体が腰痛となると考えることよりは、同じ姿勢で仕事を行うことが腰痛と関連するとされており、様々な姿勢を取ることができる機能や能力というのが重要であると考えられます。腰痛は様々な要因で起こりうる症状なので、改善が見られない場合は早めの受診をお勧めします。

   図1 姿勢の基準(「基礎運動学」より引用)      図2 姿勢評価(”Muscle:Testing and Function”より引用)

参考・引用文献

1)中村隆一,他:基礎運動学 第6版,メジカルビュー社,1997

2)山嵜勉:整形外科理学療法の理論と技術,メジカルビュー社,1997

3)Kendall PF,et al:Muscles:Testing and Function,with Posture and Pain,5th edition,Lippincott Williams & Wilkins,2005

4)Smith A,et al;classification of sagittal thoraco-lumbo-pelvic alignment of the adolescent spine in standing and its relationship to low back pain.Spine(Phila Pa 1976),33:2101-2107,2008

5)Swain CTV,et al:No consensus on causality of spine postures or physical exposure and low back pain:A systematic review of systematic reviews.J Biomechanics,2020

6)Kripa s,Kaur H:Identifying relations between posture and pain in lower back pain patients: a narrative review,Bulletin of Faculty of Physical Therapy  26, Article number: 34 .2021

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